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あなたは不動産業界における「囲い込み」という言葉を聞いたことはありますか?
囲い込みとは、「物件の売却を依頼した不動産会社が、物件を他の不動産会社に紹介しないこと」をいいます。
囲い込みをされてしまうと、売却を依頼した不動産会社が買い手を見つけてくるまで、売買に至りません。
他の不動産業者経由で購入希望者を紹介してもらえば、もっと早く売買が成立した可能性があるにも関わらずです。
不動産会社が「囲い込み」を行う目的は、「売り主」と「買い主」の双方から仲介手数料をもらうため。
売り手と買い手の双方から仲介手数料をもらうことを「両手仲介」といい、売り手か買い手の一方から仲介手数料をもらうことを「片手仲介」といいます。
不動産会社としては「両手仲介」として売買を成立させたいため、他社からの紹介を断り、自社のネットワーク内で買い主を見つけようとするわけです。
「囲い込み」は、売り主にとっても買い主にとっても多大な機会損失になります。
被害に遭わないためにも、「囲い込み」を防ぐための対策を知っておくことが重要です。
今回の記事では、囲い込みに関する3つのポイントを中心に解説していきます。
- 囲い込みとレインズの関係性
- 囲い込みの手口と防ぎ方
- 囲い込みに対しての動き
「囲い込み」被害を未然に防ぎ、自分のマンション情報をより多くの購入希望者に届けることが、早期の売買成立のカギを握ります。
それではさっそく本文に参りましょう!
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もくじ
不動産業者の囲い込みとレインズ
囲い込みの対策をする上で重要な、「レインズ」と呼ばれるシステムについて先に説明しておきましょう。
正式名称は「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」で、全国の不動産情報が掲載されています。
レインズのデータベースは、会員登録をしている不動産業者のみ閲覧することができ、一般ユーザーは閲覧できません。
物件の売り主が不動産会社に売却を依頼したあと、不動産会社がレインズに物件情報を登録します。
物件がレインズに登録されると、依頼した不動産会社以外の不動産会社も、あなたの物件情報を閲覧できます。
より多くの購入希望者に物件情報が届くことによって、早く売買を成立させることにつながるわけです。
関連記事→【マンションを売る人必見!】あなたは「レインズ」を理解できてますか?
先ほど、「売却を依頼した不動産会社がレインズに物件情報を登録する」と書きました。
ただ、不動産会社に売却を依頼する時に結ぶ「媒介契約」によっては、レインズへの登録が義務でない場合もあります。
媒介契約は以下の3種類あり、
1、専属専任媒介
2、専任媒介
3、一般媒介
レインズの登録が義務付けられているのは、「専属専任媒介」と「専任媒介」の2つのみです。
レインズを使った囲い込みの手口
それでは、レインズを使った囲い込みの手口を説明していきましょう。
囲い込みに使われる手口は主に3つ。
- そもそもレインズに登録を実施していない
- 一度レインズに登録するものの、登録証明書を受け取ったあと情報を抹消する
- 期開中にかかわらず、交渉中などといって断る
それぞれ説明します。
1、そもそもレインズに登録を実施していない
専属専任媒介、専任媒介を結んだ場合はレインズに登録することが義務になっています。
しかし実際は専属専任媒介・専任媒介でもレインズに登録をしない業者がいるのが実情です。
このケースは不動産会社にレインズの登録証明書をもらうことで解決します。
なぜなら、不動産会社はレインズへの登録証明書を売り主に見せる義務があるから。
専属専任媒介、専任媒介を結んだにも関わらず証明書を受け取っていない方は、不動産会社に確認してみて下さい。
2、一度レインズに登録して、登録証明書を受け取ったあと登録を抹消する
先ほど伝えたとおり、「専属専任媒介」と「専任媒介」の場合は、レインズへの登録が義務付けられています。
不動産会社は「レインズに登録しましたよ!」という証明書を取得して、売り主に提出する必要があるのです。
しかし、一度登録した事実を作って証明書を取得した後に、レインズから物件の情報を抹消するという手段を取る悪徳業者もいます。
このパターンは売り手側から確認することが可能なので、後ほど説明します。
3、公開中にもかかわらず、交渉中などといって断る
厄介なのがこちらのケース。
きちんとレインズに物件情報は掲載するものの、他の不動産会社から問い合わせがあると、
あ~、その物件はすでに交渉中なので紹介できませんね。
不動産業者
といって、さも買い手が見つかっているかのように振る舞うのです。
実際には買い手は見つかっておらず、自社で買い手を探す時間稼ぎをしている状態。
せっかくの購入希望者を断られてしまうと、早期に売却できるチャンスが失われてしまいます。
この囲い込みのカラクリを知るために、「掲載物件の3つの取引状況」と「更新のタイムラグ」について理解しておいてください。
掲載物件の3つの取引状況と、更新のタイムラグ
レインズに登録されている物件には、3つの取引状況が表示されています。
(1)公開中・・・他の不動産業者から問い合わせを受付けている状態
(2)書面による購入申込みあり・・・不動産業者が書面による購入申込みを受けた状態
(3)売主都合で一時紹介停止中・・・売却依頼主の事情により一時的に物件を紹介できない状態
この取引状況の変更は、不動産会社が売り主の許可なしに独断で行うことができます。
また、物件の取引状況の更新を行う際に、レインズのシステムでタイムラグがあるのです。
「公開中」から「書面による購入申込みあり」に変更をした場合でも、しばらくは「公開中」と表示されます。
「囲い込み」を行う不動産業者はこのタイムラグを悪用するわけです。
具体的には、
「〇〇不動産のものです。御社がレインズに掲載している××マンションの売却情報を拝見しご連絡しました。(※取引状況は公開中) 私どものお客様で、××マンションの購入を検討したいという方がいらっしゃるのですが、内見させていただけますか?」
「ご連絡ありがとうございます。実はついさきほど××マンションに書面で購入申し込みをされた方がおりまして・・・。ステータスの変更が反映されていなかったようです。』
といった形です。
実際は購入申し込みなど無いにもかかわらず、レインズに登録しながらも他社の依頼を断り続けることは可能なのです。
レインズが実施した囲い込み対策とは?
「囲い込み」は、不動産業界の悪しき慣習としてメディアでも大きく取り上げられるようになってきました。
状況を問題視した国土交通省は、レインズに対策を講じるよう要請をだします。
その結果、新たに「ステータス管理機能」が導入されました。
「ステータス管理機能」について説明していきましょう。
レインズの「ステータス管理機能」
ステータス管理機能がついたことにより、売り主が自分で物件の取引状況を確認できるようになりました。
まだ内見希望者を募集しているにもかかわらず、
- ・書面による購入申し込みあり
- ・売り主都合で一時紹介停止中
などの設定になっていた場合は、すぐに不動産会社に確認をとりましょう。
売り手が物件情報を確認する方法
ここからは、具体的にどのように「ステータス管理機能」を利用するのか説明していきます。
1、不動産会社と専任契約を結んだあと、レインズの登録証明書を受け取ります
2、レインズのHPにアクセスします
レインズは、「西日本レインズ」「近畿圏レインズ」「中部圏レインズ」「東日本レインズ」の4種類があります。
あなたのエリアによってログインするページが異なるので、注意してください。
3、証明書の下部に記載されているIDとパスワードを使って、ログインをします
4、ログインした後、物件の「取引状況」を確認し、現状と相違がないか確認します
確認方法は以上です。
実際は購入希望者を募集しているのに、ステータスが「書面による購入申込みあり」や「売主都合で一時紹介停止中」になっていないか確認しましょう。
もし、取引状況に誤りがある場合はすぐに不動産会社に問い合わせをしてください。
不動産業者からの囲い込みを防ぐ5つの方法
ここまで、レインズの囲い込み対策方法について説明をしてきました。
ここからは、別の方法で「囲い込み」を防ぐ方法を5つ紹介しておきます。
1、別の不動産会社経由で問い合わせをする
「囲い込み」を行っている不動産業者は、他の不動産会社が問い合わせをしてきても紹介を断ります。
言い換えれば、別の不動産会社経由で物件の問い合わせをかけてみれば、囲い込みをしているかどうかわかるのです。
たとえば、
「××不動産のものです。△△マンション〇〇号室の購入希望者がいるのですが、内見できますか?」
と尋ね、
「すでに購入申し込みが入っています。」
と返事が返ってくれば、囲い込みをされていることが分かります。(売り主であるあなたは、購入希望者がいるかどうか把握していますから)
知り合いに不動産関係の人がいれば、上記の手順で協力してもらうといいでしょう。
不動産関係にツテがなく、第三社の不動産会社に依頼をする場合は、何の見返りもなしに確認をしてもらえません。
「今売却を依頼している会社の囲い込みが発覚すれば、御社と媒介契約を結びます」と伝えれば、協力してくれる可能性が高くなりますよ。
2、不動産ポータルサイトに別の不動産会社経由で広告が出ているか
レインズに掲載されている物件情報は、掲載をした不動産会社以外でも広報することが可能です。
他の不動産会社も、買い主を見つけられれば仲介手数料が入ってきますから。
しかし、囲い込みをしている物件の多くは、「広告掲載を不可」にしていることが一般的です
囲い込みをしたい物件の情報を他社に広められては困るので。
そこで、SUUMOやHOME’Sといった大手の不動産ポータルサイトで、あなたの物件情報を調べてみましょう。
ポータルサイトを見て、依頼した不動産会社だけが広告を掲載している場合、レインズ上で「広告掲載不可」に設定している可能性があります。
1度不動産会社に確認をして、不可にしている場合は、「広告掲載可」に変更するようお願いしましょう。
3、他の不動産会社経由で内見希望者が来ているか
内見希望者と顔を合わせる場合にも、「囲い込み」かどうかを見抜くヒントがあります。
もし、売却を依頼している不動産会社しか内見希望者を連れてこない場合、物件の囲い込みを行っている可能性が高いです。
なぜなら、物件情報が広く流通していれば、他の不動産会社の担当者が購入希望者を連れてくるから。
もちろん、たまたま依頼した不動産会社がたくさん購入希望者を見つけてくれることもありますが、あまりに偏りがある場合は疑ってみてください。
4、専属専任媒介、専任媒介から一般媒介に切り替える
囲い込みを防ぐわかりやすい方法は、「専属専任媒介」「専任媒介」から「一般媒介」に切り替えることです。
そもそも1社だけが情報を独占していることが、「囲い込み」が起こる原因。
複数社が物件情報を持っていれば、物理的に情報を囲い込むことはできません。
一般媒介になってから他の不動産会社への紹介を渋っていると、他の不動産会社に買い主を先に見つけられる可能性があります。
片手仲介でも構わないから、早く売却してしまうことが、不動産会社にとっても得策になるので。
5、売り主専門の仲介会社に依頼をする
不動産会社大手の「ソニー不動産」は、売り主だけに寄り添う仲介会社としてサービスを提供しています。
両手仲介は実施せず、売り主からのみ仲介手数料をもらう片手仲介に絞ることで、高く早く売却することができるわけです。
「片手仲介」に絞り込んでいるからこそ、囲い込みのリスクを無くすだけでなく、売り主の目線に立ったサービスを提供してくれます。
囲い込みのリスクを防ぎたい方は、ソニー不動産のような会社を利用するのも一つですね。
マンション売買で囲い込みをされるデメリット
これまで囲い込みの手口についてお話をしてきました。
囲い込みが行われることによって生じるデメリットを、売り手・買い手の視点から改めて整理しておきます。
売り主側のデメリット
まずは、物件の売り手側のデメリットについて説明しましょう。
購入希望者との間で機会損失が起きる
囲い込みが行われていなければ、もっと早く購入希望者とマッチングできた可能性があります。
何か月も前に売却できたかもしれないチャンスをみすみす失ってしまうということです。
なかなか売却に至らず、売値を下げて売る必要がある
囲い込みの一番のデメリットはこのポイント。
囲い込んでいるがゆえに、なかなか購入希望者が現れない。
時間だけが過ぎ、しばらくすると依頼した不動産会社の担当者がこう言うのです。
「〇〇さん、今の値段ではなかなか買い手が付きません。マンションの売却価格を下げて売り出しましょう。」
本来なら希望価格ですぐに売れていたかもしれない物件が、囲い込みのせいで売却価格を下げられるのです。
売却価格が下がれば下がるほど、不動産担当者としては買い手を見つけやすくなります。
結局、当初の希望額から大きく値を下げた状態で売買成立というのが「囲い込み」を受けた被害者の末路です。
買い主側のデメリット
続いて、物件の買い手側のデメリットについても説明しておきます。
機会損失かつ、物件探しが難航する
被害を受けるのは、物件の売り手だけではありません。
物件の買い手も、囲い込みによって一生を過ごすマンションとの出会いを逃したかもしれないわけです。
1つのマンションとの出会いを逃してしまったがゆえに、物件探しが難航することもあります。
両手仲介自体にも問題点がある
冒頭で、「囲い込みの目的は、売り主・買い主の両方から仲介手数料をもらうため」とお伝えました。
しかし囲い込み以前の問題として、日本で「両手仲介」が認められていることもまた問題点の一つなのです。
例えば、アメリカではそもそも「両手仲介」が認められていません。
なぜなら、
- ・少しでも安く買いたい購入希望者
- ・少しでも高く売りたい売却希望者
の利益が相反する2者を、1つの仲介業者が中立することなどできないと考えているから。
日本でも裁判の例を考えてもらえばわかりやすいはずです。
被害を受けた原告側、被害を与えた被告側それぞれに別の弁護士がついていますよね?
理由は、原告と被告それぞれの利益が相反しているため、1人の弁護士が間を取り持つことができないからです。
大手の不動産会社は両手仲介の比率が高い傾向にある
ダイヤモンドオンラインの「大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃」の記事によれば、三井不動産リアルティ&住友不動産販売の業界2トップの平均手数料は5.3%を超えています。
売り主からもらう場合も買い主からもらう場合も、仲介手数料は最大3%です。
つまり、片手仲介の比率が多いほど平均手数料は3%に近くなり、両手仲介の比率が多いほど平均手数料が6%に近くなるということ。
平均手数料が5.3%以上ということは、両手仲介での売買比率がかなり高いことを示しています。
とはいえ、上に挙げた2社は不動産仲介実績のTOPクラスを誇る2社。
社内だけでも幅広いネットワークを持っていますから、買い主を見つけて自然に両手仲介になる確率が高い側面もあります。
両手仲介が無くなることによるデメリットも存在する
両手仲介に問題点があることは確かです。
ただ、安易に両手仲介を禁止してしまうと、今度は別のデメリットが発生します。
例えば、売り主から売却の依頼を受けた不動産会社は、もし自社で物件の購入希望者を見つけてもマッチングさせることが出来ません。
他の会社経由での紹介を囲い込まれるリスクはないものの、囲い込みとは別の形で結局機会損失が発生してしまうわけです。
両手仲介を認めたまま、囲い込みを減らすことはできないのか
両手仲介での取引を認めたまま、「囲い込み」を減らすことはできないのでしょうか。
以前、ワールドビジネスサテライトで「囲い込み問題」が取り上げられたとき、不動産コンサルタントの長嶋修氏が下記のような発言をしていました。
「仲介手数料の上限を、5%、10%、もしくは自由化する形にすればいいのではないか。先進国の多くでは、仲介手数料は自由化されている」
確かに、仲介手数料が自由化されると、3%だった上限が撤廃されるため、物件の価格に応じて手数料を変動させることが可能になります。
特に数百万円、数十万円の物件売買では、3%の仲介手数料は微々たるもので、人件費や広告費でマイナスになるケースもあるのが実情です。
投資した人件費や広告費以下のリターンしかないのであれば、せめて両手仲介で報酬を上げようとする不動産会社の思惑もわからないではありません。
もし仲介手数料が自由化されたとしても、不動産会社間の競争原理が働くこともあって、大幅に手数料が高くなることはないでしょう。
両手仲介のメリットを残しながら、囲い込みの要因そのものを取り除く施策として、仲介手数料の上限撤廃は面白い解決策になるかもしれません。
不動産×ブロックチェーンが実現されれば仲介業者が不要になる可能性も
囲い込みどころか、仲介業者の存在が不要になる可能性のある「ブロックチェーン技術」を知っていますか?
現在は主に仮想通貨に使用されている技術ですが、近い将来不動産にも応用されるといわれています。
もし、不動産×ブロックチェーンが現実のものになれば、売り主と買い主が直接つながることができ仲介手数料を払う必要がなくなるかもしれません。
下の関連記事で詳しく説明をしているので、興味のある人は合わせて読んでみて下さい。
関連記事→不動産×ブロックチェーン技術で業界はどう変わる?|登記・賃貸・売買
マンション売却の囲い込みに関するQ&A
最後に「囲い込み」に関するよくある質問に答えておきます。
囲い込みを実施していることが判明しても会社側に罰則はないのか
不動産情報を開示しないことは宅地建物取業法で禁止されているので、囲い込みの事実が判明すれば改善の指示が入ります。
それでも問題が改善されない場合は、業務停止処分になるケースもあるようですが、これまで1度も囲い込みで処分を受けた不動産会社はありません。
率直に言って囲い込みの事実を把握しているものの、監督官庁が黙認していると考えているのが現状です。
囲い込みが判明したらどこに通報すればいい?
囲い込み専門の対応窓口があるわけではありませんが、不動産売買に関するトラブルの窓口は複数あるので、いくつか紹介しておきましょう。
まとめ
マンション売却の際に気を付けていただきたい「囲い込み」についてお話ししてきました。
最後に囲い込みを防ぐ5つの方法について、再度まとめておきます。
- 別の不動産会社経由で物件情報を問い合わせする
- 不動産ポータルサイトに別の不動産会社経由で広告が出ているか確認する
- 他の不動産会社経由で内見希望者が来ているか確認する
- 専属専任媒介、専任媒介から一般媒介に切り替える
- 売り主専門の仲介会社に依頼をする(ソニー不動産など)
囲い込みは不動産業界の悪しき慣習であり、売り手・買い手双方のマッチングの機会を奪うものです。
知識として対策方法を理解して、早期のマンション売却を実現させてください!
