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売りたい人
今住んでいるマンションを売ろうと思っているけど、不動産会社に頼んだ時の仲介手数料がかなり高くで驚いている。
できれば仲介手数料を節約して、個人に直接売りたいから、注意点やデメリットがあれば知りたい。
そういった人に向けて記事を書いていきます。
不動産の売買は、必ずしも不動産業者に仲介を頼まなければならないというわけではありません。
不動産業者に頼まなくても売買できる条件が整っているなら、自分で売買の手続きを進めた方が、仲介手数料や消費税の負担を減らせることにもつながります。
とはいえ、不動産の売買は大金の動く取引なので、「プロがついていないと不安」と感じることが多いのも事実です。
そこでこの記事では、不動産の個人売買のメリット・デメリットについて、不動産のプロである筆者がわかりやすく解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。

株式会社ウィンドゲート代表取締役、不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランニング技能士。ZUU・幻冬舎・不動産投資の教科書などでコラムを多数執筆、セミナーも数多く開催している。国内だけでなく、海外不動産にも造詣が深く、ドイツ不動産などの著作もあり。目指すは、資産形成をお手伝いする不動産の町医者型コンサルタント。会社HP:https://windgate.co.jp/
もくじ
不動産の個人間売買をする際の9つのステップ

仲介業者を用いずに個人で不動産を売るときの基本的な流れは、次のとおりです
- 物件に関する資料(図面・写真・必要書類など)を用意する
- 物件の売却条件を設定するための調査をする(周辺の相場や物件状況などのチェック)
- 「とりあえずの売却条件」を決める
- 買い手の募集(広告出稿あるいは個別の営業)
- 顧客からの問合せへの対応(内覧などへの対応)
- 顧客との売却条件の交渉
- 売買契約書・重要事項説明書などの作成および相手方への提示・説明
- 売買契約締結・決済(代金受領)
- 物件の引渡しおよび登記手続き
不動産業者に仲介を頼まずに、土地を売却しようとするときには、これらのことを全部自分でやりきらなければならないということです。
ウェブを通じて色んなことを自分でできるようになったとはいえ、簡単というわけではありません。
それぞれの詳細については、個人間売買のデメリットと合わせて解説していきます。
不動産を個人間で売買するメリットは仲介手数料が発生しないこと

不動産業者を通して売買をすれば、仲介手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料は、法務大臣によってその上限が次のように決められており、「物件価格の3%+6万円」で考えるのが一般的です。
たとえば、2,000万円の不動産を売却すれば、その3%である「60万円+6万円=66万円」が仲介手数料の相場額となります。
不動産の取引額が大きくなればなるほど、仲介手数料の負担額は大きくなり、100万円を超える仲介手数料がかかることも珍しくありません。
個人間売買であれば、仲介業者を利用しないため、この66万円(132万円)を「0円」にできます。
不動産を個人間で売買する4つのデメリット

不動産を個人間で売買することには、諸経費を節約することができるメリットがある反面、次のような4つのデメリットがあるといえます。
- 不動産を売るための段取りを自分で組まなければならない
- 買い手を自分で見つける手間がかかる
- 売買契約に必要な書類(契約書など)を自分で作成しなければならない
- トラブルがあったときも自分で対応しなければいけない
それぞれ、説明をしていきます。
①不動産を売るための準備を自分で整える負担
不動産を売るということは、たとえば「着なくなった服をメルカリのようなオークションサイトに出品する」のとは訳が違います。
大きなお金の動く契約ですから売る側も買う側も真剣です。
したがって、不動産を売るときには「買い手がきちんと検討できる」だけの資料を用意し、「この現況・条件なら買ってもよいだろう」と思ってもらえるような環境整備をする必要があります。
その意味で、不動産の現況を正しく知らせることのできる資料(測量図面・現況写真)は必須でしょう。
特に、土地は面積に応じて価格が決まるのが通常ですから、面積をきちんと測らなければなりません。
「登記簿にも書いてある」と思う人も多いかと思いますが、登記された年代、登記の時の測量方法によっては、必ずしも正しい面積が記されているとは限らないのです。
不動産の売買では、その都度、土地家屋調査士などに依頼し、測量しなおすことが一般的です。
合わせて、隣地との境界を確認するための立ち会いを行い、上下水道管の状況、送電のための導線、道路との接道状況といった基本的なインフラの状況もしっかり確認する必要があります。
また、よくありがちな問題としては、次のケースが考えられます。
- ・道路の接道幅員が不足している
- ・境界の認識が隣地と異なっている
- ・上下水道管や導線が隣地を経由している(奥まったところの土地では自分の家のための上下水道管などが隣地の地中を通っていることはよくあることです)
たとえば、道路の幅員が4m以上かつ間口が2m以上なければ、その土地に新しく建物を建てることができません。

たとえば、実家を立て替えて二世帯住宅にしたいケースなどでも、再建設することはできません。
したがって、接道の幅が不足している土地では、資産価値がかなり下がってしまいます。
また、隣地との間に境界争いがあれば、そもそも売り物になりませんし、囲繞地(いにょうち)の場合には、通行権についてしっかり確認しておかないと、売却後のトラブルの原因となります。
水道管が他人の土地を経由しているときにも、将来の改築・リフォームの際に、水道管工事が可能かどうかも確認・検討しておく必要があるでしょう。
建物が古いということは、水道管も従来型の細いままのものであることが多く、将来のリフォームや建て替えの際に、2階にトイレなどを設置するときの障害となるからです(水道管工事が難しいのであれば、その分だけ価値は下がります)。
以上のようなことをきちんと確認・評価できなければ、物件にまつわる正しい状況や問題点を買主に伝えることができません。
②買い手を自分で見つける手間
不動産業者に仲介を頼まないのであれば、自分の手で買い手を見つけてこなければなりません。
いまではウェブが普及しているので、自分で広告を掲載する方法も増えました。とはいえ、不動産情報を提供しているサイトに必要な情報を自分で入力することもけっこうな負担となります。
一般の方では、「そもそもどこに広告を載せたら良いか」、「数ある不動産情報サイトからどこを選ぶべきか」ということも正しく判断できない可能性があります。
当然、有料な(アクセス数の多い)不動産情報サイトでは、登録料がかかることもあります。
不動産業者を利用しないときには、これらの費用も自己負担となります。
③契約書などを自分で作成する
不動産は特に高価な重要な財産です。
したがって、その売買を行うときには、必ず契約書を作成すべきといえます。
不動産業者に仲介を依頼していなければ、契約書などの売買に必要な書類も自分で用意しなければなりません。
いまでは、ネットを介して、さまざまな書類のひな形は入手できますが、すべてが全く同じフォーマットというわけでもありません。
また、物件の状況や、契約当事者同士の人間関係といった特殊な事情に応じて、設定すべき特約が違う場合もあります。
ひとつひとつの細かな点を正しく理解しながら書類を作成することは、一般の人にとって容易ではなく、一つ一つ買い主とすり合わせをしなければいけません。
また契約書を完成させて終了ではなく、不動産の所有権が移転するにあたって、以下の3つの変更を法務局に届け出なければいけません。
- 所有権移転登記
- 住所変更登記
- 抵当権抹消登記
一般的には司法書士が対応するので、事前に依頼をしておく必要があります。
個人間売買であっても、司法書士への依頼手数料は省くことができないので、注意しましょう。
④トラブルに対応や買主のフォローをしなければならない
契約書の作成は、「契約の内容を明らかにする」だけでなく、「将来のトラブルに備える(予防する)」ことも目的としています。
特に、不動産の売却は、「代金を受け取って不動産を買主に引き渡したらそれで終わり」というわけにはいきません。
たとえば、売却した後に、雨漏りやシロアリの発生、土壌汚染などが発覚したような場合には、売主に瑕疵(かし)担保責任が発生する場合があります。
「瑕疵(かし)」とは、簡単に言えば「欠陥」のことです。つまり、問題があることを知らせずに不動産を売ってしまった場合には、(それを売り主が知らなかったとしても)売り主は責任を負う(賠償しなければならない)ということです。
通常の不動産売買契約では、これらの瑕疵担保責任の範囲(どこまで責任を負うのか)、期間(いつまでに発覚した瑕疵について責任を負うのか)といったことについても「特約」として細かく条件を定めます。
さらに、不動産の売買では、以下の点についても、詳細な説明をする必要があります(いわゆる「重要事項」の説明)。
- ・法令上の制限についての説明(建築制限など)
- ・土地と道路の関係(接道状況など)についての説明
- ・インフラ整備(上下水道の導管など)についての説明
- ・敷地や建物の状態についての説明
- ・共用部分についての説明(マンションの場合)
- ・代金以外に必要な金銭負担についての説明(登記費用など)
- ・契約解除についての説明
- ・保険加入についての説明
これらの情報がきちんと提供されていない場合には、買主が住宅ローンを組む際の障害にもなります。
問題がありそうな不動産を買うために大金を融資してくれるはずがないからです。
「買主が住宅ローンを組んで不動産を購入する」というときには、不動産業者を用いずに契約を進めることは難しいと考えておいた方がよいでしょう。
基本的には不動産会社に依頼しての売買がおすすめ

大きなお金が動き、売買後もきちんと対応しなければならないという点を考えると、不動産の売買は、専門知識のない素人が1人で行うのは、やはり危険といえます。
そもそも、不動産の買い手も、「仲介業者を通さない」ということで不安に感じることが多いでしょう。
仲介業者を通さないことの最大のハードルは、「仲介業者を使わない」ことを理解してもらう(安心して取引してもらう)ことなのかもしれません。
不動産業者を通して売買するメリット・価値
不動産業者に売買の仲介を依頼することのメリット・価値は、上で解説したデメリットの裏返しです。
つまり、不動産業者に仲介を依頼すれば、
- ・買い手を見つけてくれる(広告・宣伝・営業のノウハウがある)
- ・適切な売却条件を設定してくれる(物件を適切に査定できるノウハウがある)
- ・売買契約に必要な書類・資料を揃えてくれる(契約に必要な専門知識がある)
- ・契約上の重要事項もきちんと説明してくれる(説明することは仲介業者の義務です)
- ・瑕疵担保責任も負担してくれる場合がある(大手仲介業者はだいたい負担してくれます)
- ・買主の融資のフォローもしてくれる(仲介業者は買主の住宅ローンの世話もします)
- ・万が一のトラブルの際にもきちんと対応してくれる
というメリットがあります。
つまり、仲介手数料は、「売買契約を成立させるための手間賃」、「万が一のための保険(安全に取引するための保証料)」といえるわけです。
仲介手数料が半額・無料になる不動産業者もある
最近では、仲介手数料を半額・無料としている不動産業者も増えています。
そもそも、不動産業者の仲介手数料は、上限額だけは決められていますが、それよりも低い金額に設定することは自由です。
その意味では、それぞれの仲介契約の中身(不動産業者が負う手間などの程度)に応じて、仲介手数料が決められても良い(契約ごとに手数料が設定されるべき)と考えることもできます。
「仲介手数料が高い」と感じている人は、仲介手数料半額・無料という不動産業者に相談してみるとよいでしょう。
仲介手数料を支払うよりも割安になる個人間売買サポートとは?

たとえば、次のような条件を満たしているときには、仲介業者を用いるメリットはあまり大きくないかもしれません。
- ・家族、親族間の不動産売買
- ・すでに買い手の見つかっている不動産売買
- ・買い手が住宅ローンを組まずに不動産を購入できる場合
- ・土地だけの売却
これらのケースでは、買い手を募集する必要も、住宅ローンのサポートの必要もなく、契約関係も複雑になりにくい(土地だけであれば瑕疵担保責任も明確化しやすい)といえるからです。
とはいえ、すべての売買の手続きを1人でやりきるのは、やはり負担が大きいといえます。
そのような場合には、「個人買い売買のサポート」をしてくれる専門業者に、必要に応じたサポートを依頼することも有効な選択肢といえます。
わかりやすく言えば、
- ・仲介業者は、フルサービス型
- ・個人間売買サポートは、オーダーメイドサービス型
の専門業者(不動産業者)と理解すればよいでしょう。
ガソリンスタンドも、フルサービスよりもセルフサービスの方が価格は安いのと同じように、
- ・契約書だけ作ってもらいたい
- ・契約書の作成と、土地の測量(図面の作成)だけをお願いしたい
といった形で「必要なサポートだけ受ける」という形に限定すれば、業者に支払う手数料を節約することが可能というわけです。
個人間売買のサポートを利用する際の注意点
完全な仲介ではなく、契約の手続きだけを不動産会社に依頼する場合、1点注意しなければいけないポイントがあります。
それは、購入者側が銀行から住宅ローンを借りて不動産を購入する場合です。
一般的に、個人間の売買のケースでは、銀行は融資の許可を出しません。(個人間売買サポート業者をした場合も同様)
理由としては、不動産会社が間に入っていないことにより、不正に住宅ローンを活用するケースがあるからです。
つまり、個人間売買の業者を利用する際は、買い手が現金一括で買える前提でないといけないので、気をつけましょう。
個人間で不動産の売買ができるサイト3選

ウェブでは、個人間の売買をサポートしてくれるサイトも存在します。
その中からおすすめできそうな3つのサイトを紹介します。
e-物件情報
e-物件情報は、誰でも掲載できる「不動産広告サイト」です。
一戸建てだけでなく、マンション、空き家、土地だけの場合でも登録かのうです。
不動産の情報は、売買が成約するまで掲載可能で、個人間で契約をやりきれるなら手数料は一切かかりません。
また、売り主の個人情報を非公開にしたまま情報を掲載できます。
情報掲載料は、登録する画像の数によって決まります(登録時の払いきりです)。
個人間での売買が不安というときには、「買主向け」に「エージェントサービス」が用意されています。
家いちば
家いちばは、「個人間の売買を仲介するため」の掲示板サイトです。
他の個人間売買向けのサイトに比べ、色んな面で緩いのが特徴といえます。
たとえば、家いちばのウェブサイドでは、
- ・いつでも思いついた時に、気軽に物件の掲載ができます。
- ・売り出し価格がまだ決まっていなくても、掲載できます。
- ・自分の不動産でなくても(親や親戚の所有でも)掲載できます。※本人の許可はとってください
- ・どんな場所でも、どんなに古くっても、大丈夫です。掲載の条件はありません。
- ・まだ中が片付いていない、すぐに売れる状態ではない、という状況でも掲載できます。
- ・まだ、売ろうと決めたわけではない、金額次第で売ってもよい、という方も歓迎です。
という物件の登録も歓迎である旨が示されています。
つまり、「条件がよければ売ってみようかな」という気軽な情報提供でもかまわないということです。
なお、家いちばでは、売り手と買い手がマッチングされた後の支援しか行ってくれません。
緩い情報でも提供できるということは、買い手の方も「掘り出し物があれば買ってみよう」というユーザーが多いことが推測されるので、マッチングまでに時間が掛かる可能性があります。
また、家いちばを媒介した契約が成立したときには、相場の半額(1.5%)の仲介手数料が発生します。
全国不動産物件情報 物件S
物件Sは、全国の賃貸物件・売買物件を紹介している情報サイトです。
物件情報以外にも、不動産会社・不動産鑑定所などの情報も掲載しています。
登録料・手数料なども完全無料ですが、情報入力がやや細かいので、慣れていない人には登録が手間と感じることもあるかもしれません。
また、どちらかといえば、プロ向け(業者向け)の情報提供サイトといった意味合いの方が強いサイトであるともいえます。
まとめ
不動産の売買は、「必ず不動産業者に仲介を頼まなければならない」というわけではありません。
自分でしっかり準備でき、きちんと対応しきれるのであれば、業者の助けを得ずに、不動産を売却することも可能です。
個人間売買であれば、消費税も含めて、売値の10%以上に相当する「経費(手数料)」を節約することができます。
1,000万円の10%は100万円ですからかなりの金額です。
とはいえ、不動産売買には、専門的な知識が必要不可欠であることも事実です。
大きなお金の動く重大な契約だからこそ、「プロの力を借りるべき」であるとも考えられます。
個人間売買を支援する専門業者は、ちょうどその中間にある仕組みと考えればよいでしょう。
昨今は、「これまで当たり前だったこと」を違う視点・やり方で考えてみる・行ってみるという時代でもあります。
「買い手がすでに決まっている」というような不動産売買を考えている場合などには、これらの支援業者の利用も含めて、経費を節約できる選択肢についても考えてみる価値はあるかもしれません。
