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近年では、民泊で(副)収入を得たいと考える人が増えているようです。
たしかに、外国人観光客が増えたことなどで、全国的にホテルの供給不足が続いているため、ホテルよりも安い金額で宿泊先を確保できる民泊には大きなニーズがあるようです。
空き家の有効活用する方法として、これから民泊をはじめたいと考えている人もいるかもしれません。
いま民泊を行うときには、3つの異なる法律のうちのいずれかの仕組みにしたがって手続きを行わなければいけません。
法律が3つもあれば、「違いがわからない」という人も多いと思います。
そこで、この記事では、
- ・これから民泊をはじめるときに必要な手続き
- ・民泊に関する新しい法律ができて何が変わったのか?
などについて解説します。
これから民泊をはじめてみたいと考えている人は参考にしてみてください。
もくじ
民泊の概要や定義
民泊に関係する法律について解説する前に、「民泊」という仕組みについて確認しておきましょう。
そもそも民泊とは何か?
「民泊」とは、本来的には「一般民家に泊まる」ということです。
たとえば、旅行の際に友人が所有しているリゾート地にある住居を借りることも、広い意味では民泊です。
近年では、不動産の所有者が自ら旅行者などに宿泊用の部屋として自宅の部屋を提供するビジネスのことを指して「民泊」と呼んでいます。
民泊の需要が増えている理由と背景
民泊は、注目され多く利用されるようになった理由・背景としては、次の2つの点を挙げることができます。
- ・「外国人観光客」が増加していること
- ・「空き家」を有効活用するために、さまざまな政策が実施されていること
外国人観光客が増えたことは、いわゆる民泊ブームの最も大きな要因といえます。
外国からの観光客が増えたことで、ホテルの供給が不足気味になり(ホテル代も高くなり)、「ホテルよりも安価な価格で短期間の宿泊先を確保したい」というニーズと民泊がマッチしたことが、民泊の需要が増えている最も大きな理由といえるでしょう。
また、外国からの観光客の中には、「自分の知らない国の人の生活・文化に直接触れてみたい」と考えて、あえて一般の家庭にホームステイすることを目的とする人もいるでしょう。
いまでは、インターネットが普及しているので、民泊事業者を探すシステムも簡単に作ることができるというのも民泊需要の基盤を支えているといえます。
さらに、いわゆる「空き家問題」などへの対処を自治体が強く勧めていることも、「これから民泊をはじめよう」と考える人を増やす一因になっているといえるでしょう。
民泊を事業者として始める際に届け出を行う必要がある
この記事を書いている時点(令和元年7月)では、民泊営業を行うためには、以下の3ついずれかの法律にしたがって事前の手続きを行わなければなりません。
- ・旅館業法
- ・国家戦略特区法(いわゆる特区民泊)
- ・住宅宿泊授業法(民泊新法)
「適用対象となる法律が3つもある」というのは、一般の人には少しわかりづらいのです。
これは、民泊という仕組みが新しい仕組みであることから従来の法律ではカバーしきれていないために、このような事態になってしまっています。
旅館業法
旅館業法は、いわゆるホテル・旅館・ペンションといった、従来型の宿泊サービスを提供する事業を行うときに適用される法律です。
「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」は、すべて旅館業法の適用を受けるのが原則です。
営利目的で行う民泊は「宿泊料を受けて人と宿泊させる営業」ですから、旅館業法の適用を受けるのが本来の姿です。
旅館業の3つの種類
旅館業の適用対象となる営業形態には、次の3つの種類があり、該当する営業形態に応じて、認可を受けるための設備条件などが異なります(旅館ホテル営業が最も厳しくなります)。
- ・旅館ホテル営業:施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの
- ・簡易宿所営業:宿泊する場所を多数人で強要する構造および設備を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業(ペンションやユースホステルなど)
- ・下宿営業:施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
一般的な民泊のほとんどは、上記のうち「簡易宿所営業」に該当する場合がほとんどでしょう(設備を揃えれば、旅館ホテル営業として認可を受けることは可能です)。
旅館業での民泊運営の条件
旅館業に基づいて民泊(簡易宿所営業)を行うには、宿泊施設が次の条件を満たしていなければなりません。
- ・客室の延べ床面積が33平方メートル以上であること(宿泊者数を10人未満とする場合には、3.3㎡に当該宿泊者の数を乗じて得た面積以上あれば良い)
- ・適当な換気・採光・照明・防湿及び排水の設備があること(不衛生な環境ではダメということ)
- ・宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴施設を有すること(公衆浴場が近接している場合などは入浴施設がなくても大丈夫)
- ・そのほか、都道府県(または市・特別区)が「条例で定めている構造設備の基準」に適合していること
- ・防火安全対策がきちんと施されていること(火災報知器の設置など)
旅館業での許可を受けるときには、条例で定められている基準に注意する必要があります。
旅館業法の規定の上では、簡易宿所の許可にはいわゆるフロントは必要ありませんが、条例ではフロントの設置を求めているものが多いようです。
旅館業で民泊を運営するための申請方法
旅館業法の許可申請は、「都道府県(または保健所を設置する市、特別区)の保健所」に行います。
実際には、申請の前に、民泊営業を行う建物の図面などの書類を持参して保健所と事前相談を行います。
建物の状況によっては、改修・改善措置が必要となることがあるからです。
そのため、管轄消防署とも消防法上の検査についての「事前相談」を行っておくのが一般的です。
要するに、「許可を受けられる(法律が求める条件を満たした)状態になっていなければ申請を受け付けてもらえない」と考えておいてよいでしょう。
事前相談から許可(書の交付)までの大まかな流れは次のとおりです。
- 事前相談
- 図面による事前確認
- 建築確認申請(自治体窓口)・消防法の検査の相談(管轄の消防署) 。
- 近隣住民への周知
- 許可申請
- 書類審査・実地調査(保健所)
- 保健所長から消防署長に確認(その前に消防署による検査を実施)
- 許可(許可書交付)
国家戦略特区法(特区民泊)
国家戦略特区法は、地域振興や国際競争力の向上させること目的に、一定の地域を「経済特区」とし、「既存の規制の適用対象外」とすることを認めている法律です。
国家戦略特区法に基づいて指定された特別の地域(いわゆる国家戦略特区)の民泊営業については、「旅館業法の適用を受けなくてよい」場合があります。
特区民泊に指定されているエリア
国家戦略特区として指定されているのは、この記事を作成している時点(令和元年7月末)の段階では、下記のとおりです。
- ・東京都
- ・神奈川県
- ・千葉県成田市
- ・千葉県千葉市
- ・大阪府
- ・兵庫県
- ・京都府
- ・新潟県新潟市
- ・兵庫県養父市
- ・福岡県福岡市
- ・福岡県北九州市
- ・沖縄県
- ・秋田県仙北市
- ・宮城県仙台市
- ・愛知県
- ・広島県
- ・愛媛県今治市
ただし、上記のすべての特区で、特区民泊を行えるわけではありません。
特区民泊を行うためには、その前提となる条例をそれぞれの自治体が予め制定していなければならないからです。
上記の国家戦略特区のうち、現時点で民泊特区に関する条例を定めているのは、本記事作成の時点では、
- ・東京都大田区
- ・北九州市(福岡県)
- ・新潟市(新潟県)
- ・千葉市(千葉県)
- ・大阪府
- ・大阪市(大阪府)
- ・八尾市(大阪府)
- ・寝屋川市(大阪府)
となっています。
特区民泊での民泊運営の条件
特区民泊の認定を受けるためには、次の条件を満たしている必要があります(細かい条件は、自治体によって異なる可能性があるので、それぞれの地域で確認してください)。
- ・宿泊施設の所在地が国家戦略特別区域内であり、それぞれの自治体で特区民泊が禁止されている地域(たとえば住居専用地域や工場地域)として指定されていないこと
- ・宿泊施設の滞在期間が2泊3日~9泊10日までの範囲内で自治体が定めた期間以上であること
- ・一居室の床面積が自治体の定めた面積以上であること(25平方メートル以上が目安)。
- ・施設使用方法に関する外国語案内、緊急時の外国語による情報提供など外国人旅客の滞在に必要な役務の提供があること
- ・滞在者名簿が備え付けられていること
- ・施設周辺地域の住民に対して適切な説明がなされていること
- ・施設周辺地域の住民からの苦情および問合せに対する適切かつ迅速な対応のできる体制を整えていること
- ・衛生設備(トイレ・洗面設備・浴室・台所)や消防設備(火災報知器など)の条件を満たしていること
なお、分譲マンションの1室といった区分所有建物で特区民泊を行う際には、それぞれのマンションなどの「管理規約」に注意する必要があります。
管理規約において民泊営業を禁止しているときには、特区民泊の認定を受けることができないからです。
管理規約が民泊営業について特段言及していない(「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」となっていることが一般的)ときには、「管理組合が特区民泊を禁止する決議をしている」場合を除いては、特区民泊の認定を受けることができます(自治体によっては管理組合の承諾書提出を求められることもあります)。
特区民泊での民泊運営するための申請方法
特区民泊を行う場合には、それぞれの自治体の担当窓口(生活衛生課など)に相談・申請します。
相談から申請・認定までの基本的な流れは、下記のとおりです(旅館業法に基づいて営業許可を受ける場合とほぼ同様です)。
- 事前相談
- 図面による事前確認
- 建築確認申請(自治体窓口)・消防法の検査の相談(管轄の消防署) 。
- 近隣住民への周知
- 許可申請
- 書類審査・実地調査
- 認定(認定書交付)
住宅宿泊事業法(民泊新法)
民泊に関係する法律の3つめは、「住宅宿泊事業法」(いわゆる民泊新法)です。
民泊新法の概要については、下で別に解説を加えますので、ここでは、民泊新法に基づいて民泊営業を行う流れについてだけ確認しておきます。
民泊新法での民泊営業を行うときの条件
民泊新法に基づいて民泊営業を行うときには、次の条件を満たす必要があります。
- ・民泊営業を始める前に都道府県知事に届出をする
- ・営業を行う地域が自治体の指定する禁止区域ではない
- ・年間の営業可能日数が180日以内であること(毎年4月1日正午が起算日)
- ・宿泊者名簿を作成・保存する
- ・宿泊施設の床面積が宿泊者1人あたり3.3平方メートル以上であること
- ・換気、除湿、清潔の保持が可能な措置が講じられている(設備が設置されている)こと、定期的に清掃が行われていること
- ・非常用照明などの安全確保措置がとられていること(家主が同居していて宿泊室の面積が小さい場合は不要)
- ・消防用設備(火災報知器など)が設置されていること(家主が同居していて宿泊室の面積が小さい場合は不要)
- ・近隣住民とのトラブルを防止するための措置(宿泊者へのマナーなどの説明・苦情対応など)を講じていること
- ・住宅宿泊管理業者を確保しなければならない
- ・営業開始後は2ヶ月ごとに都道府県知事に報告しなければならない
民泊新法による手続きと、旅館業法・特区民法による手続きとの一番の違いは、「民泊新法は届出制」であることです。
旅館業法(許可)、特区民法(認定)では、申請後に所定の審査・検査がありますが、民泊新法の場合には、審査・検査は実施されないので、事前相談も必要がないということになります。
つまり、違法営業であることが明らかな場合を除いては届出だけで営業できるということです。
民泊新法での民泊運営するための申請方法
民泊新法に基づく民泊営業の届出には、次の書類が必要です。
- ・届出者が、後見等の登記をされていないことの証明書(法務局の後見部門にて取得できる後見等登記事項証明書など)
- ・届出者が、事実上破産する前の破産が確定している者を含め、破産者等でないことの証明書(民泊事業者の戸籍がある自治体にて取得できる身分証明書など)
- ・法律が定める欠格事由(成年被後見人、被保佐人、破産者など)に該当しないことを誓約する書面
- ・住宅の登記事項証明書(法務局で取得)
- ・住宅が入居者の募集が行われている家屋に該当する場合は、入居者募集の広告などそれを証明する書類(賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写しや募集広告の写し等)
- ・随時所有者などの居住の用に供されている家屋の場合には、それを証明する書類(家主がそこに住んでいることを証明できる資料)
- ・各設備の位置、間取り及び入口、各階の別、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積などの必要事項を記載した住宅の図面(手書きの図面でも可)
- ・その他の必要書類(賃貸物件で民泊する場合には転貸の承諾書、民泊営業が禁止されていない区分所有建物であることを証明する資料(マンション管理規約や管理組合理事会議事録など)
- ・住宅宿泊管理業者に管理業務を委託した場合には、管理業者から交付された委託契約書の写し
- ・消防法令適合通知書(管轄消防署から交付を受ける)
届け出を行わずに民泊を行った場合の罰則は?
届出をせずに民泊営業を行った場合には、次のようなペナルティがあります。
- ・自治体から業務停止命令・事業廃止命令を受ける
- ・命令にしたがわなければ、6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される
Aibnbを行う場合は3つの法律のうちどれを選ぶべき?
Aibnb(エアビーアンドビー)のような民泊の仲介サイトに登録をしてゲスト(宿泊者)を募集しようとするときには、ここまで解説してきた3つの法律のいずれかの仕組みを利用することになります(無許可(届出)営業の民泊は登録できません)。
いずれの法律の仕組みで民泊を行うのが有利かというのは、それぞれの民泊営業の狙いなどによって異なります。
たとえば、
- ・「自分が住んでいる家の使っていない部屋をゲストに貸して、ちょっとでも副収入を増やしたい」
- ・「多くの外国人と交流したいから自分の家で民泊をやってみたい」
という程度であれば、民泊新法に基づいて民泊営業をするのが、もっともコストを掛けずに民泊営業を行える場合が多いといえるでしょう。
他方で、
- ・民泊でたくさん稼ぎたい(本業に近い形で民泊をしたい)
- ・遠くにある空き家を民泊に提供して収益をあげたい
- ・家族旅行客などの大人数の顧客を相手に民泊を行いたい
というときには、旅館業者としての許可を受けなければならない場合が多いといえます。
自分が住まない住宅で民泊を行う場合には、原則として外部の業者に管理を委託しなければならないので、そのための費用がかかります。
ランニングコストが増えれば、民泊新法で対応できる年180日の営業日数(年間稼働率は最大で50%にしかならない)では利益があがらないという場合も少なくないからです。
実際に近年では、簡易宿所(カプセルホテルも簡易宿所です)の登録件数が増えており、民泊に代わる存在になりつつあります。
平成30年6月から施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)の概要
民泊新法(住宅宿泊事業法)は、民泊事業者が急増したことで、問題のある民泊(安全・衛生でない民泊)が増えたことや、近隣住民とのトラブルが社会問題となったことを受けて、平成29(2017)年6月に成立した法律です。
法律成立後、周知期間を経て、「平成30(2018年)年6月」に施行されました。
民泊新法で決まった3つのこと
民泊新法が施行されたことで最も大きく変わったことは、「民泊にも法律の規制」がかけられるようになったということです。
いわゆる民泊ブームの流れに乗って新規に増えた民泊のほとんどは、旅館業法(特区民泊)の許可(認定)を受けていないものがほとんどでした。
いまではAirbnbのような仲介業者は「3つの法律のいずれの手続きも経ていない民泊」の登録を受け付けていませんので、法律に基づく手続きが必須といえます。
実際にも、Airbnbでは、民泊新法施行後にかなりの数の民泊事業者の登録が削除されました。
次に、民泊新法施行後は、年間の営業日数が最大180日(自治体はそれ以下に日数にすることも可能)となったことも大きな変化です。
そのために、民泊新法による民泊営業では収益に明確な限界が生じます。
さらに、家主が不在の建物で民泊営業を行う場合には、建物の管理業務を委託する業者を指定しなければならなくなりました。
したがって、いわゆる空き家活用型の民泊の場合には、営業に必要となるランニングコストが従前よりも高くなります。
営業日数の制限も加味すれば、空き家活用型の民泊の収益率はかなり低くなってしまうと考えておいた方がよいでしょう。
民泊新法の影響を受ける3つの事業者
民泊新法は、民泊にかかわる次の3つの事業者に適用される法律です。
- ・住宅宿泊事業者
- ・住宅宿泊管理業者
- ・住宅宿泊仲介業者
住宅宿泊事業者
旅館業法で許可を受けていない人が、いわゆる民泊営業を行うときには、住宅宿泊事業者として届け出を行う必要があります。
住宅宿泊管理業者
民泊新法は、民泊営業および民泊に利用する物件の管理について明確なルールを設けることを目的とした法律です。
そこで、民泊新法では、
- ・物件に家主が同居しない場合
- ・同時に5部屋以上を民泊施設として提供する場合
には、「管理業者」を定めなければならないことを定めています。
住宅宿泊管理業に含まれるのは、次のような業務です。
- ・宿泊者への利用方法の説明
- ・宿泊名簿の作成
- ・宿泊施設の衛生の確保(清掃作業など)
- ・宿泊者・近隣住民に生じるトラブル(苦情)への対処
住宅宿泊管理業者は、国土交通大臣の登録をうけなければなりません。
なお、下記の事情(欠格事由)に該当するときには、住宅宿泊管理業者としての登録を受けることができません。
住宅宿泊仲介業者
民泊新法は、報酬を得て次の事業を行う者(Airbnbのような事業者)にも適用されます。
- ・宿泊者のため、届出住宅における宿泊のサービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
- ・住宅宿泊事業者のため、宿泊者に対する届出住宅における宿泊のサービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
すでに、旅行業登録(第1種~第3種、地域限定)を受けていない人が民泊仲介を行うときには、住宅宿泊仲介業の登録を行う必要があります(旅行代理業・観光圏内限定旅行業者代理業の場合にも住宅宿泊仲介業の登録が必要です)。
登録は、観光庁長官に必要書類・登録免許税(9万円)を添えて申請する必要があり、5年ごとの更新(更新料26,500円)が必要です。
※住宅宿泊仲介業者の欠格事由は住宅宿泊管理業者の欠格事由と同様です。
なお、住宅(民泊)以外の仲介を行うためには、別途「旅行業者としての登録」が必要となるほか、登録業者には、業務内容の報告義務などが課されます。
民泊新法における「住宅」の定義
民泊新法に基づいて民泊を行うときには、民泊を行う住宅が
- ・設備要件
- ・居住要件
を満たす物件である必要があります。
設備要件とは?
設備要件を満たすためには、「台所」「浴室」「トイレ」「洗面設備」の4つの基本設備が備えられている必要があります。
これらの設備は、すべての宿泊室に備えられている必要はありません。また、いわゆる「離れ」を民泊として提供する場合にも、母屋にある浴室やトイレを宿泊者が利用できる状況にあれば問題はありません。
ただし、簡易宿泊所(旅館業法)の場合とは異なり、浴室を近隣の公衆浴場で代替するというようなことはできません。
居住要件とは?
民泊新法における住宅の居住要件を満たすためには、以下3つの条件のいずれかに該当する必要があります。
- ・現に人の生活の本拠として使用されている家屋(継続的に住まれている住宅であること)
- ・現在入居している人はいないが入居者の募集が行われている家屋(分譲または賃貸の募集が行われている住宅であること)
- ・随時所有者などの居住の用に供されている家屋(別荘やセカンドハウスなどで年に1回以上は利用されている住宅)
したがって、たとえば、「数年前に相続をしたまま放置しっぱなしの空き家」や「投資用に購入したばかりでまだ誰も住んでいないマンション・アパート」では、必要な手続き(自己利用、入居者の募集)を経なければ民泊営業することができません。
旅館業と貸室業の違いをわかりやすく解説
民泊新法が施行されたことで、民泊営業のハードルはかなり高くなったといえます。
そこで、空き家などを貸室業(いわゆるウィークリー・マンスリーマンション)に活用できないかと考えている人も増えているようです。
貸室業であれば、民泊の場合のような事前の手続きの必要がないからです。
貸室業と旅館業との違いは、次の2つの基準で判断されます。
- ・宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任は誰にあるのか?
- ・宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有するか否か?
たとえば、アパート・マンションを借りたときには、借りた部屋を管理する責任は、居住者である借主にあります(責任を果たさなかったときには、家主に賠償しなければなりません)。
他方で、民泊の場合には、部屋の清潔さなどを保持するのは、宿泊者ではなく民泊事業者(家主)にあると考えられます。
また、賃貸を借りた際には、その物件で「生活をする」ことが一般的です。そこで生活しているかどうかということは、「所在地に住民票を移しているかどうか」、ライフラインの維持費を負担しているかどうかといった状況から総合的に判断することになります。
とはいえ、すべてのケースについて、細かく判断することは役所にとっても大きな負担となります。
そこで、
1ヶ月以上の期間にわたり継続的サービスを提供することを前提としていることを対外的に明示せずに、部屋に宿泊させた代わりに対価を受け取っている場合
には、原則として旅館業の許可(特区民泊の認定・民泊新法の届出)が必要となります。
ただし、「1ヶ月以上の継続利用でしか貸さない」と明示している場合でも、実際には「短期間での解約」が繰り返されている場合には旅館業法の適用対象となります。
つまり、「形としては貸室業にしたいから、契約後に途中キャンセルしてくれ」と顧客にお願いして「もぐりの貸室業」を行うことはできないということです。
【番外編】民泊にまつわるトラブル集
民泊を行う人は、「プロ」の旅館業経営者ではない人がほとんどです。
また、民泊を利用する観光客のほとんどは外国人です。
そのため、民泊営業は、通常の旅館・ホテル営業よりもトラブルを抱える確率は高いといえます。
ここでは、民泊営業の際によく起こりうる典型的なトラブルのいくつかについて紹介します。
住宅の設備を壊されてしまう
海外旅行(在住)の経験のある人であれば知っていることと思いますが、日本と海外では、設備の使用方法や条件が違うことも少なくありません。
たとえば、電気プラグの形で、電圧環境も異なります。形の違うプラグに無理差し込もうとして電源プラグが壊されてしまうこともあるかもしれません。
また、旅行者が持ち込んだ電気製品を異なる環境で使用したことで故障したことによるトラブルが起きることもあるでしょう。
さらには、カーテンの開閉方法がわからずに、カーテンを壊されてしまったというようなこともあるようです。
備品の持ち去り
住宅に備え付けてあったディッシュやトイレットペーパー、コップなどを顧客が持ち帰ってしまうということもあるかもしれません。
「民泊はホテルではない」ということを、契約の際にきちんと説明することが大切です。
また、高価な調度品などは、部屋に備え付けておかないようにしましょう。
生活マナーの違い
国が違えば、生活マナーも異なります。
「ゲストが深夜に大騒ぎ」というのは、民泊の典型的なトラブルといえます。
これらのケースの多くは、「契約時にきちんと説明していた」と事業者は思っている場合も少なくないようです。
しかし、「どのくらいの音量」であれば騒音となるのかというのは、人によって判断基準も異なります。
日本人としては「迷惑な音量」であっても、そのゲストの国にとっては「これくらいは普通」と考えている場合もあるかもしれません。
マナーをめぐる説明は、こちらの意図が確実に伝わるように十分に留意する必要があります。
予約の時間にゲストが来ない
国が違えば考え方や振る舞い方が異なれば「約束の時間」についての考え方も違うということは少なくありません。
私たちが国内のホテルなどを予約するときには、チェックイン時刻などを宿泊先に伝えておき、それに遅れるときには事前に連絡することが一般的です。
しかし、外国のゲストの場合には、「予約の時間はあってないようなもの」と考えている人もいるかもしれません。
「そろそろ寝たいのにゲストがまだチェックインしてくれない」というトラブルが起きないようにするためにも、事前に丁寧に説明することが大切です。
まとめ
民泊新法が成立したことで、これまでに比べて民泊営業をすることのハードルは高くなったといえます。
「安定した毎月の副収入」として民泊営業を考えるときには、民泊新法ではなく、旅館業法(簡易宿所)の許可を得る必要がある場合も方が多いといえます。
他方で、他の民泊やカプセルホテルとの差別化を図らなければ、営業を始めたけどゲストが集まらない(開店休業)ということになってしまうかもしれません。
「空いている家があるから民泊でも」と考えているような場合には、空き家の売却や、賃貸に出すといった、他の活用方法を考えてみるのも選択肢のひとつかもしれません。